適当に駄文。
書き物は妖怪メイン・・・でもないかも。
TRPGとか電源ゲーとかの話も。
+ + + + + + + + + +
トレイン
アイツが死んだ。小学校からずっと一緒だった僕に何も相談せず、マンションから飛び降りて死んだ。
警察がやって来て色々と質問したけれども、僕は確かになにも聞かされていなかった。
他の友人たちに尋ねても、同じ答えしか返ってこなかっただろう。アイツは誰にも何も話さなかったはずだ。
そう、僕らは何もアイツから聞いていなかった。アイツも誰にも話さなかった。なぜならそれは誰もが知っていることだったから。
毎日の閉塞感。敷かれたレール。未来は無限だなんて言うけれど、無限なのはレールの長さだけで、方向はほとんど決まっている。
みんな同じように勉強し、同じように受験して、同じように就職する。同じように家庭を作り、同じように年老いて、最後にみんな同じように年老いて死ぬんだ。
ああもちろん、受験に失敗する奴、就職できない奴、家庭が作れない奴もいるだろう。しかしそれは自分で選んだんじゃなくて、勝ち取れなかっただけだから。進む方向はみんな同じなんだ。
アイツはそこから抜け出した。脱線した。飛翔した。決まったレールから外れたんだ。
アイツが飛び降りたマンションの屋上は、当然のように立ち入り禁止になっていた。花を置くことも出来なかった。
アイツが落ちた道路に花を置く気にはなれなかった。地面に落ちたのはアイツの体だけ。心は、命は、魂は、みんなと同じレールから離れて飛んだのだから。低い地面なんかに、重力なんかで僕らを同じように縛る地面なんかに、花を置く気にはなれなかった。
ふと思いついて向かいのビルに足を向けた。その屋上なら、アイツに近いかもしれない。
同じように思った奴らが居たんだろうか。僕の前に何人か見知った顔が、僕と同じように花を持って屋上に佇んでいた。
なんとなく腹が立った。
他の人間と同じレールから抜け出したアイツを送るのに、他の人間と同じく花を捧げるのが冒涜だと思えた。
ああ、このいつまでも続く閉塞感。でも僕は抜け出す方法を知っている。
屋上の端まで行って、足元に花を置いた。フェンスを登り、上半身を突き出した。
僕も抜け出すよ、このレールから。平行線を描くレールから飛び出して、僕の道を作るよ。
飛んだ。
恐怖は無かった。気持ちよかった。開放感だけがあった。みんなと同じレールから、僕も逃げ出すことが出来たんだ。
ちょっとした優越感に浸って、僕は風を切って降下しながら屋上を振り返った。まだ同じレールに残っている連中を、最後に元気よく笑い飛ばしたかった。
屋上の連中は、行儀よく並んで次に飛び降りる順番を待っていた。
アイツが死んだ。小学校からずっと一緒だった僕に何も相談せず、マンションから飛び降りて死んだ。
警察がやって来て色々と質問したけれども、僕は確かになにも聞かされていなかった。
他の友人たちに尋ねても、同じ答えしか返ってこなかっただろう。アイツは誰にも何も話さなかったはずだ。
そう、僕らは何もアイツから聞いていなかった。アイツも誰にも話さなかった。なぜならそれは誰もが知っていることだったから。
毎日の閉塞感。敷かれたレール。未来は無限だなんて言うけれど、無限なのはレールの長さだけで、方向はほとんど決まっている。
みんな同じように勉強し、同じように受験して、同じように就職する。同じように家庭を作り、同じように年老いて、最後にみんな同じように年老いて死ぬんだ。
ああもちろん、受験に失敗する奴、就職できない奴、家庭が作れない奴もいるだろう。しかしそれは自分で選んだんじゃなくて、勝ち取れなかっただけだから。進む方向はみんな同じなんだ。
アイツはそこから抜け出した。脱線した。飛翔した。決まったレールから外れたんだ。
アイツが飛び降りたマンションの屋上は、当然のように立ち入り禁止になっていた。花を置くことも出来なかった。
アイツが落ちた道路に花を置く気にはなれなかった。地面に落ちたのはアイツの体だけ。心は、命は、魂は、みんなと同じレールから離れて飛んだのだから。低い地面なんかに、重力なんかで僕らを同じように縛る地面なんかに、花を置く気にはなれなかった。
ふと思いついて向かいのビルに足を向けた。その屋上なら、アイツに近いかもしれない。
同じように思った奴らが居たんだろうか。僕の前に何人か見知った顔が、僕と同じように花を持って屋上に佇んでいた。
なんとなく腹が立った。
他の人間と同じレールから抜け出したアイツを送るのに、他の人間と同じく花を捧げるのが冒涜だと思えた。
ああ、このいつまでも続く閉塞感。でも僕は抜け出す方法を知っている。
屋上の端まで行って、足元に花を置いた。フェンスを登り、上半身を突き出した。
僕も抜け出すよ、このレールから。平行線を描くレールから飛び出して、僕の道を作るよ。
飛んだ。
恐怖は無かった。気持ちよかった。開放感だけがあった。みんなと同じレールから、僕も逃げ出すことが出来たんだ。
ちょっとした優越感に浸って、僕は風を切って降下しながら屋上を振り返った。まだ同じレールに残っている連中を、最後に元気よく笑い飛ばしたかった。
屋上の連中は、行儀よく並んで次に飛び降りる順番を待っていた。
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双葉稀鏡
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男性
趣味:
TRPG
自己紹介:
いつもは別のハンドルを使っている。
某MMOの属性武器の通称と同じなのは嫌なので、こっちを名乗る。
某大学RPG研究会OB。
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