否定する

自己を犠牲にして他者を救おうとした人間
ソレは立派なことだろう。
その行為を否定はしない。立派な人だったのだろう。

しかし、それを肯定する行為を否定する。
絶対に許さない。
一人の人間が死ぬまで呼びかけたおかげで、複数の人間が避難できた。
それを肯定すると、人命が数の計算になる。
一人を殺して複数を救う術を、肯定することになる。

為政者はそれが仕事だ。非情と言われても、やらねばならぬ選択がある。
それを行うことに異議はない。否定もしない。
しかし、それを肯定すことは、絶対に許さない！

個を捨てて全を救うのは、為政者の仕事だ。
個を捨てて全を救えと叫ぶのは、個人の仕事なのだ。
個人の仕事としても、俺は否定するほうに回るけどね。
それもまた、個人の仕事だろうから。

命を懸けても守りたいものがあるのは、いいことだ。
そのことを否定しないし、その人を否定したりはしない。
しかしそのことを賛美すると、極論として全体主義に行き着く。
だから、賛美は許さない。
いや、思想の自由は自由なので、許さない、と叫ぶ自由も許してくれ。

自分で選んだ結果が自己犠牲になってしまったのか、
他者に強要されて自己犠牲自体が目的になってしまったのか、
その差は大きいと思うんだ。

避難を呼びかけながらも庁舎ごと津波に飲み込まれた、
立派な宮城の危機管理課職員さんの御冥福を祈ります。