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適当に駄文。 書き物は妖怪メイン・・・でもないかも。 TRPGとか電源ゲーとかの話も。
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ヤマ無し
オチ無し
イミは有るようでやはり無し

+ + + + + + + + + +
いまだに熟さぬトマトのように

キッチンでなにかが砕ける音がした。少年が覗いてみると、女が生卵をシンクへ投げつけている音であった。
二つ、三つ、女が苛立たしげに手を振るたびに、気味の悪い音をたてて卵が割れてゆく。
少年は女に声もかけず、ベッドへと戻った。夕飯の材料が消えていくことに多少の不安はあったが、制止したところで事態が好転するとは思えなかった。

ベッドの周囲4メートル。それが少年の世界だ。
彼の首には分厚い皮のベルトが巻かれており、そこから伸びる鎖はベッドの脚へつながれている。
学校の帰りに声をかけられ、多少の小遣い目当てで誘いに乗った結果がこれだった。
意外に生活に不自由はない。彼の生活圏内にトイレはあったし、女が仕事で出かけている時はテレビでも眺めていれば良い。多少煩わしいのは、さすがに風呂には入れぬために女に体を拭ってもらわねばならぬことだ。
逃げようと思えば逃げられただろう。ベッドを持ち上げて鎖を抜くことも、皮の首輪を手近な家具で擦り切ることも、いやそこまでの苦労をせずとも大声を上げることはいつでも可能だったはずだ。
逃げようと思えば逃げられた。しかし少年は逃げなかった。
居心地がよかったわけではない。悪かったわけでもない。無為な生活、多少の不自由さ、その全てが少年の今までの暮らしと大差なかっただけである。

キッチンでなにかが潰れる音がした。少年が覗いてみると、女がトマトをシンクで押しつぶしている音だった。
いまだに青味の残るトマトは女の手の下で少し抵抗した後、かけられた体重に屈服して果汁を飛ばしながらあえなく潰れた。
女は苛立っているのだ。
少年を探している誰か、おそらくは警察の手が近くまでやってきたのであろう。
いつかはそうなることだと、女は気づいていなかったのか。
また一つ、トマトが潰れた。
追い込まれた女は、やがて少年も手にかけようとするだろう。いまだに熟さぬトマトのように、少年の命も潰してしまおうと狂気に駆られるであろう。
逃げようと思えば逃げられた。しかし少年は逃げなかった。
いつかはそうなることだと、少年は気づいていたのだから。
けして孵らぬ卵のように、いまだに熟さぬトマトのように、どうせいつかは潰れるのだから。
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無題
面白い.

だが,気の利いたコメントが浮かばないww
黒猫夜 2007/12/08(Sat) 編集
Re:無題
>面白い.

そう言ってもらえるだけで嬉しいです。
…が、書いた俺はこれが面白いのかどうか良くわからないw
 【2007/12/09】
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双葉稀鏡
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某MMOの属性武器の通称と同じなのは嫌なので、こっちを名乗る。
某大学RPG研究会OB。
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