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適当に駄文。 書き物は妖怪メイン・・・でもないかも。 TRPGとか電源ゲーとかの話も。
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←鬼騙(モノガタリ)之五:バックベアード

ふんぬー
まあ、いろいろありました

ほつれ糸の焼き直しのようになってしまった。

+ + + + + + + + + +
否哉(いやや)
 7月。期末テスト目前であった。
 柳川 風音は成績が悪い方ではなかった。
 しかしそれが最後の追い込みをしない言い訳になるほどの好成績でもなく、珍しく夜遅くまで机に向かう羽目となっていた。
 眠気覚ましにラジオなどかけて、日本史の教科書とにらみ合いながら、戦国武将の名前をノートに書き取ったりしていた。
 クロスワードパズルの完成まで、あと少し。
 ・・・まあ半ば以上、家族へむけてのパフォーマンスとしての試験勉強であった。
 DJのおしゃべりが音楽へと変わったのを契機に、気分転換に背伸びなどしてみた。
 クーラーの効きが悪いのか、パジャマ姿でも、やや蒸し暑い。
 そういえば夏休みの予定をたてていなかったな、と風音は考えた。
 去年と違って親しい友人も出来ていることだし、中には男も混じっている。男女比1対1。これで夏休みを棒に振るのは、高校生活捨てたも同然。
「順当に考えれば、海か」
 水着姿でキャッキャウフフ。いつもは見られない彼女の素肌に彼もドッキリ!
「・・・しないか」
 自分と、そして友人・千夏のプロポーションを考慮して、溜息をついた。千夏もメリハリのある体型とは言いがたいが、風音は背が高い針金であった。
 水着は絶望的か、と別のプランを考えた。
「日本人体型なら浴衣はどうだ」
 と思ったが、夏祭りは先日終わったばかりだ。雪夫が祭の手伝いのためTシャツにジーンズ、卓真は不参加、千夏と風音も手伝いのために巫女の衣装なぞ着せられた。
 うむ、あの時見せてないからこそ、ここは浴衣であろう。そう思ってもう少しプランを練る。
「夏場で、あえて温泉か」
 湯上りの上気した肌、卓球で乱れた裾、レッツ一夏のアバンチュール! 一泊二日だか二泊三日だかで、お一人様お幾らですか?
「金の問題があったか!」
 色々と走り書きしたノートに、大きく「金!!」と書いて丸をした。してから気づいた。
「発想が中年オヤジだな」
 溜息をついてノートを破りとった。
 妄想の塊をくしゃくしゃに丸め、力作の武将クロスワード(未完)ごとゴミ箱に放り込んだ。
 ラジオではDJがまたくだらぬ話を垂れ流していた。
 どこぞの誰かのお便りか、「今まで恋をしたことがありません」などと臭すぎる文章を読んでいた。
「誰かを好きになるためには、まず自分を好きにならないと」
 DJの知ったような回答に、風音は舌打ちした。
 叩き壊すようにラジオの電源を切った。
 風音は自分が嫌いだった。
 他者の評価が嫌いだった。表情が読めない、何を考えているかわからない、近寄りがたい、威圧的だ、なまいきだ、馬鹿にしている、お高くとまっている。
 自分の内面が嫌いだった。他人の目を気にしている、そのくせ協調性はない、感情の起伏が激しい、他人の意見に反対ばかりする。
 自分の外見が嫌いだった。背が高い、肉付きが悪い、目つきが悪い、唇が薄い、鼻が低い、そばかすがある。
 それでも、風音には好きな人間がいた。
 恋ではないかもしれないが、家族が好きだ、友人3人が好きだ。
 自分が嫌いで、好きな人がいるから、だから怖い。
 あの人たちは、自分を好きでいてくれてるのだろうか?
「・・・寝るか」
 なんだか泣きそうになったので、さっさと寝ることにした。
 ああ家族の期待を裏切っているなぁとおもいながら。
 自己嫌悪の居心地の悪さを免罪符にして、思考停止した自分をさらに嫌いながら。

 朝になれば目が覚める。覚めねば叩き起こされる。起きたら学校へ行かねばならぬ。
 自己嫌悪などさておいて、とりあえずは風音も生活を送らねばならなかった。
「お仕事だものな」
 呟いて家を出た。駅まで歩いて電車で2駅。通いなれた通学路。
 歩いている途中で、一人の女性の後姿を見つけた。
 長袖のシャツに薄手のベスト。ロングスカートの腰のあたりまで、艶やかな黒髪が流れていた。彼女が一歩踏み出すたびに髪がゆれ、小さな耳が見え隠れした。
(美人なのだろうな)
 なんとなくそう思いつつ、追い越した。
 と、風音に声がかけられた。
「ちょっと待って」
「なんでしょう」
 背後からかけられた高い声に、どこか違和感を覚えつつ振り向いた。
 違和感の正体はすぐにわかった。
 追い越したばかりの人物は、女性ではなかった。
 無精髭ののびた皺だらけの顔の中に、埋もれるように小さな目が光っていた。横に大きく開いた鼻からも、わずかに伸びた毛が見えた。
 風音は内心うろたえたが、唾を飲み込んで声が上ずらないよう気をつけながら、もう一度応えた。
「なんでしょう」
「あなた、あたしのことどう思う」
 変態だろうが!と叫びかけたのを必死にこらえ、目をそむけて
「おきれいですね」
とだけ残して早足で歩き出した。
 下手に相手をすれば、何をされるのかわかったものではなかった。
 さっさと逃げるに限るだろう、と思ったものの、もう遅かったようだ。
 背後から甲高い裏声が聞こえた。
「ほんとうにそう思う?」
「お化粧くらいしたほうがよくない?」
「お髭は剃ったほうがいいかしら?」
 知らない知らない!
 正面だけを見つめて足を速めながら歩いた。
 しかし声は追いかけてきた。
「でも、これがあたしだものね」
「みにくいこの顔が、あたしだものね」
「それでも綺麗でいたいものね」
「綺麗とおもって欲しいものね」
 追いかけてきているのか?
 なぜ声の大きさは変わらない?
 耳元で囁かれるように聞こえるのはなぜだ?
 走った。
 走り出した。
 身のうちに溢れる恐怖に負けて、思わず逃げ出した。
 しかし声は聞こえ続けた。
「ほんとのあたしを見て欲しいものね」
「でも、ほんとのあたしは汚いものね」
「褒めて欲しいものね」
「でも褒められたものではないものね」
 やめろ、やめろ。
 これはキラいだ。これはイヤだ。これは嫌。嫌。
 だってこれは
「好かれたいものね」
「好きだって言ってほしいものね」
「でも言ってもらえないものね」
「言われても信じられないものね」
 だってそれは
「みにくいものね」
「きたないものね」
「外見とりつくろってもね」
「中身がそんなものじゃね」
 それどころか
「外見だって褒めてもらえないものね」
「嫌われてるものね」
「笑われているものね」
「だから一緒に居てもらえるのにね」
 そんなわけは
「しかたないものね」
「それしか取り得がないものね」
「みにくいあたしはね」
「きたないあたしはね」
 いやだ、そんなのはいやだ。
「でもそれしかないものね」
「一人はいやだものね」
「あたしはみにくいのだから」
「笑われるのだから」
「笑われて一緒にいられるなら」
 いっそ
   もっとみにくいほうが
 そのとき、風音の脚が何かを蹴飛ばした。
「うわったあああああ!?」
 聞き覚えのある落ち着きの無い声とともに、風音の体が地面に転がった。
「なんだ、どうした、土転びか、脛こすりか、それとも未確認生物か」
 慌ててどこをどう走ったものか、校門の前であった。
 風音に押し倒された雪夫が、眼鏡をなおしながら見上げていた。
「とりあえずどかないか、柳川。この姿勢は男としていろいろと我慢ならないんだが」
 言葉の最後のほうは聞こえなかった。
 久々に声を出して泣いた。

 昼休みまでの授業は、全部休んだ。
 落ち着くまで保健室で眠ったあと、警察を交えて教師たちに「変質者」の話を聞かれた。
 できるだけ正確に答えようと努力はしてみたが、たぶんアレは捕まらないだろうな、という予感めいた確信があった。
 そのせいか、一部の教師が狂言ではないかと疑っていたようだった。落ち着きすぎている、とのことだった。困ったものである。
 昼休みになって教室に帰ろうとしてみると、廊下にまで雪夫の声がしていた。
「だから、いやみ、だろ」
 相手をしているのは卓真のようだ。
「いやや、だったと思うんだがなぁ」
 いったい何の話をしているのやら。どうせたいしたことではあるまいが。
 教室へ入ると、気づいた千夏がすぐに駆け寄ってきた。
「大丈夫?」
「うむ、大丈夫すぎて不審がられてしまった」
 笑って返すと、千夏は不思議そうな顔をした。
 ああそうだな、この子にはわかるまい、と思って風音は笑みを深くした。
 風音が帰って来ると思っていたのか、雪夫たちは4人分の席を確保して昼食を摂ろうとしていた。
 千夏と卓真は弁当箱を、雪夫は購買のパンとパック牛乳を前にしていた。
「しまった、昼食を買ってないぞ」
「ああ、僕が買って置いた」
 雪夫が机の上に別のパンを置いた。
 風音が買いそびれたときのために、わざわざ余分に買ったものか。
「助かった。ありがとう」
 素直に礼を言われると思っていなかったのか、雪夫が真っ赤になって何かモゴモゴと呟いた。
 卓真が大きな弁当箱に顔を隠すようにして笑っていた。
 千夏がにこにこと微笑んでいた。
「本当に、ありがとう」
 私と一緒に居てくれて。
 柳川 風音は、自分が嫌いだ。
 しかし自分のこの感情だけは、大好きだ。
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いつもは別のハンドルを使っている。
某MMOの属性武器の通称と同じなのは嫌なので、こっちを名乗る。
某大学RPG研究会OB。
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