適当に駄文。
書き物は妖怪メイン・・・でもないかも。
TRPGとか電源ゲーとかの話も。
鬼騙(モノガタリ)之弐:目々連→
っつーわけで結構前に書いてた発掘品の手直し。気が向いたら続ける。というか続けないと本当にわけがわからないなw
注意
萌えもなければ燃えもありませんし、笑いもありません。
ただダラダラとした日常めいた何か。
あと本文そこそこ長いです。
まあキャラだけ作ってほったらかしというのも可哀想ですしね。色々ひっくるめてサルベージってとこですか。
っつーわけで結構前に書いてた発掘品の手直し。気が向いたら続ける。というか続けないと本当にわけがわからないなw
注意
萌えもなければ燃えもありませんし、笑いもありません。
ただダラダラとした日常めいた何か。
あと本文そこそこ長いです。
まあキャラだけ作ってほったらかしというのも可哀想ですしね。色々ひっくるめてサルベージってとこですか。
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橘 千夏(たちばな ちなつ)は、すっかり暗くなった帰り道を早足に辿っていた。
明日から学校が始まると言うことで、高校一年生最後の日を友人と共に思い切り堪能してきた帰りだ。
明日、つまり二年生最初の日もおそらく思い切り遊ぶのではあろうが。
しかし今日は思いのほか遅くなりすぎた。帰宅に時間がかかると伝えはしたものの、おそらく両親は夕食を前にして待っていることだろう。
日が沈んでから少し風が出てきたようだ。季節のわりに生暖かい風が、千夏のショートカットを撫でていった。
山を上る長い坂道に出た。この道を登るとまもなく橘神社、千夏の家だ。
千夏は緊張した面持ちで坂道を見上げて、足を止めた。
街灯の少ないこの道は、変質者が出ると言う噂があった。
陸上部で鳴らした千夏は痴漢などにはさほど、そうたいして、少なくとも自分では恐怖を感じていないつもりだった。なにしろ走って逃げられる存在なのだから。
ただもう一つの噂は、あまり得意な方面ではなかった。
近所のおばさんたちの話では、「出る」というのだ。
人間でない何かが。
人間だった何かが。
子供の頃から慣れ親しんだこの道を日が暮れてから通るのは、もちろん今日が初めてではない。それでも見たこともない幽霊が出てくるのが怖いのだ。神社の娘としては、情けない限りではあった。
千夏は唾を飲みこむと、視線を落として坂道を上りはじめた。
大丈夫、何もいない、いるわけがない。そう呟きながら足を運んだ。
自分の爪先を見るように、他の何も見ないようにして急ぎ足で歩いた。
大丈夫、大丈夫、何もいない、いるはずがない。
歩きなれた道が、やけに長く感じられた。視界には暗い路面と、左右の爪先しか見えない。
この坂はこんなに長かっただろうか。
意を決して目を上げると、まだ半分も残った道が見えた。
「もう少し、もう少しだから」
自分を励まそうとした声も、元気がなかった。
やはり時間を忘れてはしゃぎすぎたのがいけなかったか、脚が鉛のように重い。疲れきっているようだった。
家までもう少しだから、そうもう少しだから、それほど危険はないだろう……。
ちょっとだけ休もう、と疲れた体に鞭打って道の端まで歩き、ペタンと座り込んだ。
ジーンズに包まれた両脚を投げ出し、ふうと一息。布地越しに感じる地面の冷たさが心地よかった。
一度腰を下ろしてしまうと、感じる疲れはさらに増した。もう一度立つ元気がなかなか沸いてこない。尻に根が生えるというのはこういうことか、とぼんやり考えながら夜空を見上げた。星が綺麗だ。
そうしているうちに、最初は心地よく感じた冷たさが、だんだん酷になってきた。最後に食事をしたのが友人と喫茶店に入った時なので、腹も鳴っている。
しかし、立ち上がるのも億劫だ。
これは本格的にヤバいなぁ、とぼんやり考えはしたものの、腰を上げる気力もなく、ただ焦点の合わぬ目でぼうっと宙を見た。冷たい地面が少しずつ体力を奪ていった。
もはや考える気力も失いかけて、千夏はただただ宙を見上げていた。
座り込んでから、どれほど時間がたっただろう。
ふと気付くと、同じ年頃の少年が顔を覗きこんでいた。
少年は千夏が座り込んで動かないのを不審に思ったらしく、声をかけてきた。
「どうした、大丈夫か」
千夏は返事を返す気力もなく、少年の顔を見返した。見覚えはなかった。
少年の顔は線が細いが、太い眉と吊りあがり気味の目が頼りなげな印象を打ち消している。
少年は無言の千夏を眉を寄せて訝しげに眺め、しばらくして得心したように頷いた。
「ダルに憑かれたな」
少年は一言呟くと、背負っていたナップザックからアルミホイルの包みを取り出した。包みを開くと、夜気に香ばしい匂いが混じった。大きなカツオの握り飯だ。
少年は、両手で持たねば落としてしまいそうなその巨大な握り飯を千夏の前に差し出して、「食べな」と言った。
千夏の目が少年の顔から握り飯に動き、同時に腹が鳴った。思わず伸ばした手に、握り飯が乗せられた。久しく忘れた行動を取るように、千夏はゆっくりと握り飯にかぶりつき、咀嚼した。
握り飯にはオカカとすり潰した梅干が混ぜ込んであった。香りと酸味が麻痺しかけていた食欲を刺激する。
一口飲み込んでからは早かった。千夏は空腹を思い出し、顔を埋めるように巨大握り飯を食い始めた。文字通りわき目も振りはしない。
少年が隣に腰を下ろした気配がした。かすかに聞こえた笑い声は、健啖ぶりを示す千夏に安心したのか呆れたのか。ポリポリと何かを噛み砕く音がし始めたのは、少年もまた何か食べ始めたのであろう。
数分後、握り飯が姿を消し、千夏は名残惜しそうに指についた御飯粒を口に運んでいた。
「もう歩けるな」
「あ、うん」
少年の言葉に状況を思い出して、気恥ずかしげに頷いた。現代日本にいて空腹で動けなくなるとは、思ってもいないことだった。よほど疲れていたのだろうか。
少年は元気そうな千夏を見て微笑を浮かべ、その腰を上げた。慌てて千夏後を追う。
「オニギリありがと。あの」
少年は手を振って千夏の言葉を止めた。礼を言われるのが恥ずかしいのか、わずかに赤面している。
「困ったときはお互い様さ。それじゃ」
軽く手を振って坂を下ろうと背を向けた少年に、千夏はもう一度声をかけた。
「ねえ、ダルニツカレタって何」
少年は振り返り、少しびっくりしたように「聞こえてたのか」と言った。千夏が完全に放心していたものと思っていたらしい。
少年は困った様子で千夏に向き直ると、頭を掻き掻き言った。
「あぁっと、ハイウェイヒュプノシスって知ってるか」
「え、なんかテレビで聞いた気がする」
夜間の高速道路など代わり映えのしないまっすぐな道で、運転手が催眠状態に陥ること、だったろうか。
そう言うと少年は頷きながら言った。
「まあそんなもんさ、さっきのも。山道を歩いていると急に足が重くなったり、疲れを感じて座り込んだりするんだ。昔の人はそれを妖怪の仕業だと思って、塗り壁とか子泣き爺とか、ヒダル神って呼んだんだ」
脚が進まなくなれば塗り壁。体が重くなれば子泣き爺。そして疲労と空腹で倒れればヒダル神、省略してダルと呼んだのだ、と少年は語った。特にヒダル神はたちが悪く、街道で餓死した旅人の亡霊とも呼ばれていた、とも。
「塗り壁は道に座って一服、ダルは飯を食うってのが一番の対処法なんだと。これを知らないと、運が悪けりゃとり殺されたってさ」
そう結んだ少年の言葉を、千夏はあまり聞いていなかった。気もそぞろに辺りを見回している。幽霊だの妖怪だのといった話に弱い少女だった。その様子に苦笑した少年は、言い含めるように言葉を続けた。
「ハイウェイヒュプノシスだよ。脳の禁止作用で意識が麻痺したのさ」
それもあまり救いにはならず、千夏はわずかに震える声で言った。
「わたしの家まで来ない。オニギリのお礼もしたいしさ」
たぶん気付かれているだろうな、とは思ったものの、一人で帰るのが怖いのだとは、さすがに素直に言う気にはなれなかった。
「すぐ近くだし。そこの上の神社だよ」
「悪い、けっこう遅くなったからな、姉貴も心配してると思うんだ。早く帰らなきゃ」
心底すまなそうな顔で言うので、千夏も無理には頼めなかった。
手を振って坂道を下る少年を見送り、恐る恐る振り返った。
街灯の少ない暗い上り坂が続いていた。暗がりの各所に何かが潜んでいる気がして、背筋に不快な震えが走った。
「あんな話聞かせるからっ」
八つ当たり気味の呟きで気合を入れ直し、千夏はまた急ぎ足で足を進め始めた。
少年が最近引っ越してきたばかりの転校生であること、そして千夏と同じクラスに編入されたことがわかるのは、その翌日の話である。
明日から学校が始まると言うことで、高校一年生最後の日を友人と共に思い切り堪能してきた帰りだ。
明日、つまり二年生最初の日もおそらく思い切り遊ぶのではあろうが。
しかし今日は思いのほか遅くなりすぎた。帰宅に時間がかかると伝えはしたものの、おそらく両親は夕食を前にして待っていることだろう。
日が沈んでから少し風が出てきたようだ。季節のわりに生暖かい風が、千夏のショートカットを撫でていった。
山を上る長い坂道に出た。この道を登るとまもなく橘神社、千夏の家だ。
千夏は緊張した面持ちで坂道を見上げて、足を止めた。
街灯の少ないこの道は、変質者が出ると言う噂があった。
陸上部で鳴らした千夏は痴漢などにはさほど、そうたいして、少なくとも自分では恐怖を感じていないつもりだった。なにしろ走って逃げられる存在なのだから。
ただもう一つの噂は、あまり得意な方面ではなかった。
近所のおばさんたちの話では、「出る」というのだ。
人間でない何かが。
人間だった何かが。
子供の頃から慣れ親しんだこの道を日が暮れてから通るのは、もちろん今日が初めてではない。それでも見たこともない幽霊が出てくるのが怖いのだ。神社の娘としては、情けない限りではあった。
千夏は唾を飲みこむと、視線を落として坂道を上りはじめた。
大丈夫、何もいない、いるわけがない。そう呟きながら足を運んだ。
自分の爪先を見るように、他の何も見ないようにして急ぎ足で歩いた。
大丈夫、大丈夫、何もいない、いるはずがない。
歩きなれた道が、やけに長く感じられた。視界には暗い路面と、左右の爪先しか見えない。
この坂はこんなに長かっただろうか。
意を決して目を上げると、まだ半分も残った道が見えた。
「もう少し、もう少しだから」
自分を励まそうとした声も、元気がなかった。
やはり時間を忘れてはしゃぎすぎたのがいけなかったか、脚が鉛のように重い。疲れきっているようだった。
家までもう少しだから、そうもう少しだから、それほど危険はないだろう……。
ちょっとだけ休もう、と疲れた体に鞭打って道の端まで歩き、ペタンと座り込んだ。
ジーンズに包まれた両脚を投げ出し、ふうと一息。布地越しに感じる地面の冷たさが心地よかった。
一度腰を下ろしてしまうと、感じる疲れはさらに増した。もう一度立つ元気がなかなか沸いてこない。尻に根が生えるというのはこういうことか、とぼんやり考えながら夜空を見上げた。星が綺麗だ。
そうしているうちに、最初は心地よく感じた冷たさが、だんだん酷になってきた。最後に食事をしたのが友人と喫茶店に入った時なので、腹も鳴っている。
しかし、立ち上がるのも億劫だ。
これは本格的にヤバいなぁ、とぼんやり考えはしたものの、腰を上げる気力もなく、ただ焦点の合わぬ目でぼうっと宙を見た。冷たい地面が少しずつ体力を奪ていった。
もはや考える気力も失いかけて、千夏はただただ宙を見上げていた。
座り込んでから、どれほど時間がたっただろう。
ふと気付くと、同じ年頃の少年が顔を覗きこんでいた。
少年は千夏が座り込んで動かないのを不審に思ったらしく、声をかけてきた。
「どうした、大丈夫か」
千夏は返事を返す気力もなく、少年の顔を見返した。見覚えはなかった。
少年の顔は線が細いが、太い眉と吊りあがり気味の目が頼りなげな印象を打ち消している。
少年は無言の千夏を眉を寄せて訝しげに眺め、しばらくして得心したように頷いた。
「ダルに憑かれたな」
少年は一言呟くと、背負っていたナップザックからアルミホイルの包みを取り出した。包みを開くと、夜気に香ばしい匂いが混じった。大きなカツオの握り飯だ。
少年は、両手で持たねば落としてしまいそうなその巨大な握り飯を千夏の前に差し出して、「食べな」と言った。
千夏の目が少年の顔から握り飯に動き、同時に腹が鳴った。思わず伸ばした手に、握り飯が乗せられた。久しく忘れた行動を取るように、千夏はゆっくりと握り飯にかぶりつき、咀嚼した。
握り飯にはオカカとすり潰した梅干が混ぜ込んであった。香りと酸味が麻痺しかけていた食欲を刺激する。
一口飲み込んでからは早かった。千夏は空腹を思い出し、顔を埋めるように巨大握り飯を食い始めた。文字通りわき目も振りはしない。
少年が隣に腰を下ろした気配がした。かすかに聞こえた笑い声は、健啖ぶりを示す千夏に安心したのか呆れたのか。ポリポリと何かを噛み砕く音がし始めたのは、少年もまた何か食べ始めたのであろう。
数分後、握り飯が姿を消し、千夏は名残惜しそうに指についた御飯粒を口に運んでいた。
「もう歩けるな」
「あ、うん」
少年の言葉に状況を思い出して、気恥ずかしげに頷いた。現代日本にいて空腹で動けなくなるとは、思ってもいないことだった。よほど疲れていたのだろうか。
少年は元気そうな千夏を見て微笑を浮かべ、その腰を上げた。慌てて千夏後を追う。
「オニギリありがと。あの」
少年は手を振って千夏の言葉を止めた。礼を言われるのが恥ずかしいのか、わずかに赤面している。
「困ったときはお互い様さ。それじゃ」
軽く手を振って坂を下ろうと背を向けた少年に、千夏はもう一度声をかけた。
「ねえ、ダルニツカレタって何」
少年は振り返り、少しびっくりしたように「聞こえてたのか」と言った。千夏が完全に放心していたものと思っていたらしい。
少年は困った様子で千夏に向き直ると、頭を掻き掻き言った。
「あぁっと、ハイウェイヒュプノシスって知ってるか」
「え、なんかテレビで聞いた気がする」
夜間の高速道路など代わり映えのしないまっすぐな道で、運転手が催眠状態に陥ること、だったろうか。
そう言うと少年は頷きながら言った。
「まあそんなもんさ、さっきのも。山道を歩いていると急に足が重くなったり、疲れを感じて座り込んだりするんだ。昔の人はそれを妖怪の仕業だと思って、塗り壁とか子泣き爺とか、ヒダル神って呼んだんだ」
脚が進まなくなれば塗り壁。体が重くなれば子泣き爺。そして疲労と空腹で倒れればヒダル神、省略してダルと呼んだのだ、と少年は語った。特にヒダル神はたちが悪く、街道で餓死した旅人の亡霊とも呼ばれていた、とも。
「塗り壁は道に座って一服、ダルは飯を食うってのが一番の対処法なんだと。これを知らないと、運が悪けりゃとり殺されたってさ」
そう結んだ少年の言葉を、千夏はあまり聞いていなかった。気もそぞろに辺りを見回している。幽霊だの妖怪だのといった話に弱い少女だった。その様子に苦笑した少年は、言い含めるように言葉を続けた。
「ハイウェイヒュプノシスだよ。脳の禁止作用で意識が麻痺したのさ」
それもあまり救いにはならず、千夏はわずかに震える声で言った。
「わたしの家まで来ない。オニギリのお礼もしたいしさ」
たぶん気付かれているだろうな、とは思ったものの、一人で帰るのが怖いのだとは、さすがに素直に言う気にはなれなかった。
「すぐ近くだし。そこの上の神社だよ」
「悪い、けっこう遅くなったからな、姉貴も心配してると思うんだ。早く帰らなきゃ」
心底すまなそうな顔で言うので、千夏も無理には頼めなかった。
手を振って坂道を下る少年を見送り、恐る恐る振り返った。
街灯の少ない暗い上り坂が続いていた。暗がりの各所に何かが潜んでいる気がして、背筋に不快な震えが走った。
「あんな話聞かせるからっ」
八つ当たり気味の呟きで気合を入れ直し、千夏はまた急ぎ足で足を進め始めた。
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双葉稀鏡
性別:
男性
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自己紹介:
いつもは別のハンドルを使っている。
某MMOの属性武器の通称と同じなのは嫌なので、こっちを名乗る。
某大学RPG研究会OB。
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