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適当に駄文。 書き物は妖怪メイン・・・でもないかも。 TRPGとか電源ゲーとかの話も。
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前回の2倍近くまで膨れ上がった。まあ人も2倍に増えたしな。
会話が多すぎて読みづらいのではなかろうか。色々やってみたんだが・・・。
それはさておき、今日もダラダラ妖怪退治。

+ + + + + + + + + +
 千夏がふと気付くと、目の前に友人の顔が急接近していた。思わず大きくのけぞる。左手の弁当箱がバランスを崩しかけたのを慌てて抑えたので、今度は右手の箸が暴れ出した。
「気もそぞろ、と言った感じだな。なにがあった、千夏」
 かろうじて弁当も箸もキープした千夏を、いつも変わらぬポーカーフェイスが凝視している。彼女の名は柳川 風音(やながわ かざね)。付き合いは一年ほどで、まだ千夏にもその性格は完全には読みきれていない、というより底知れない。
 風音は乗り出していた身を引きながらも、千夏から視線をそらさない。
「思うに、朝からチラチラ覗き見ている転校生が気にかかっているのか」
 千夏は思い切り吹いた。最後の一口のはずだった御飯粒が風音の顔にはりついた。
「うむ、私が悪いとは思うが、この仕打ちもどうかと思う」
「ごめんごめん」
「まあいい、実はもっとひどい仕打ちもしているからな」
 どういう意味かと眉を寄せた千夏の背後を、風音がポーカーフェイスのまま指差した。
「言っていなかったが、先程から後ろに転校生がいる」
「うわ」
 慌てて振り返ると、たしかに転校生がいた。転校生で、かつ昨夜千夏に握り飯を分けてくれた少年だ。
 少年、朝に物部 卓真(ものべ たくま)と名乗っていた彼は、また今日も大きな握り飯片手に千夏に微笑みかけていた。
「ああ、やっぱり昨日の行き倒れぐあああああああっ!?」
 思わず脛を蹴り上げたら思った以上に悶絶したが、しかし握り飯を落さないところを見ると多少大げさに騒いでいるのだろう。いや、騒いでいるのだ。千夏はそう決めた。
「なんだ、もう知り合いなのか。千夏の一目惚れという線は消えたのだな」
「ちょっと縁があってね。顔だけは知ってる。物部 卓真だ、よろしく」
 いらぬ事を言わぬうちに足を踏みつけて黙らせようとする千夏の攻撃をタップダンスでかわしながら卓真が名乗り、
「柳川 風音だ。よろしくな、物部」
 風音は千夏に吹きかけられた飯粒を拭いつつ応えた。
「ふむ、しかし物部が原因で塞いでいるわけではないようだな。ではあれが問題か」
 風音の視線を追った千夏は、その先にあるものを見て慌てて視線をそらした。ついさっきまで忘れていたものを、どうしてまた思い出させるのか。
 机である。
 今年千夏に割り当てられたばかりの、生徒用の机である。
 中にしまえばいいものを、もらったばかりのプリントやら筆箱やらを出しっぱなしにしているので、思い思いに散って昼食を取る同級生たちも、誰もその席は使っていなかった。
「いくら千夏がずぼらとは言え、まだ新学期も始まったばかりで机の中はカラッポだろうに。それともなにか変なものでも入っていたのか」
 ずぼらは余計だ、と言いかえそうとする前に、卓真が問題の机に近づいた。
「散らかってるんでも置いてるんでもないな。机の上全体に広げてある。ってことは、上の物や机の中が問題なんじゃなくて」
「あ、こらっ」
 人のものを勝手に触るな、と千夏が叫ぶ前に、卓真が広げられていたプリント類を手早くまとめた。
 千夏の視界に、昼前からずっと気にかかっていたソレが再び姿をあらわした。
 机の木製の天板に、人の目のようなものが浮き出ていた。
 木目だ。ただの木の節の模様だった。
 しかしソレは、ただの気のせいとは思えぬリアルさで、千夏の目を見つめ返した。
 妙に嬉しそうに卓真が言った。
「こいつぁ立派な目々連だ」
「む、どうした」
 木目に気付かぬ風音が不審げに近づくより先に、大きな声が響いた。
「モクモクレン!? なんだ、誰だ、どうした、妖怪か、呪いか、UFOか。どれ、僕に見せて見ろ」
 呆れた様子で風音が首を振り、声を上げた眼鏡の男子生徒に呼びかけた。
「竹井(たけい)、静かにしろ」
「わかってる、騒がないようにするさ。さあ誰だ、さっき妖怪の話をしたのは、何の話だ、教えてくれ」
 やれやれと苦笑して風音が卓真に眼鏡の生徒を指し示した。
「すまない、物部。こいつは竹井 雪夫(たけい ゆきお)、ビリーバーなので話題に注意してくれ」
 きょとんとした顔で卓真がビリーバーとはなにかと聞き返した。
「心霊現象やUFOなどのオカルト関連の話題を、頭から真実だと決め付けてきかない非科学的な人間のことだ」
 答えた風音に雪夫と呼ばれた生徒が口を尖らせて反論した。
「そういう柳川はどんな写真見せても嘘だ間違いだって言う懐疑論者じゃないか」
「懐疑論の何が悪い。疑うことと否定することは大きく違うぞ。明確な証拠を持ってくれば私だって信じるとも。しかし君の提示するのは、いつも反論の余地どころか検討にすら値しないものばかりだろう。それでは信じるに足らん」
「初めから疑ってかかるから、真実が見えないんだ。橘、君も神社の娘だろう。さあ僕に援護射撃を」
「いや、神社はそういうのと関係ないし・・・っていうか二人ともやめなよ、物部君困ってるから」
 むしろ困っているのはクラス中の視線を集めてしまった千夏本人であったが、しかしなんとか二人の舌戦は中断したようだった。風音も雪夫も卓真に視線を戻した。
「僕には困っているようには見えないな」
「ああ、私には面白がっているように見受けられる」
「僕らの真剣な論議を面白半分に見物するとは、転校生でも許せないな。締めるべきだ、柳川」
「うむ、吊るすべきだな、竹井」
「待て待て、今大事なのは俺の話じゃないだろっ」
 にじりよる二人から逃げようとする卓真。
 千夏がふと気付くと、先程まで注目していたクラスメイトたちは、あからさまにこちら4人を無視していた。クラスでいじめがあったなんて気付きませんでした、というわけか。本当に怖い所だ、学校は。
「さて、締められたくなければ妖怪の話をするんだ、転校生」
「卓真だ。物部 卓真」
「うむ、自己紹介は覚えておくべきだな、竹井。さて吊るされたくなければ話を続けろ、物部」
「おまえら横暴だなぁ」
 呆れたようにぼやいた卓真が、千夏のほうに顔を向けた。
「俺の話よりも、とりあえず君の話を聞くべきだと思うんだけど、悪い、名前なんだっけ」
「あ、そうかまだ言ってなかったね。橘 千夏。よろしく」
 出会ったのは昨夜だったのに、まともな話ができたのは今が初めてのような気がした

 千夏の話といっても、たいしたことはない。
 ただ朝礼が終わって初めて二年生の教室へ入り、新しい席に着いてしばらくしてから、どこからか妙な視線を感じただけだ。
 それを聞いた風音が小首をかしげた。
「それで、見ていたのがこの木目だと。しかし私には普通の木目にしか見えないが」
「何言っている柳川、人間の目にそっくりじゃないか。そことそこが上と下のまぶただろう。さすがに睫毛はないようだけど」
「竹井が幻覚を見るのはいつものこととして、ただ千夏が気にしすぎているだけだと思う」
 気味悪げに指を差して確認する雪夫と、見る角度を変えながら理解に苦しんだ声を出す風音。握り飯を食べ終えた卓真が二人を制した。
「まあ待てって。初めから目玉だの木目だのの話をしても、仕方ないぜ」
 右手に残った飯粒を舐め取りながら、恐れ気も無く左手を千夏の机に置いて、話題の木目を隠した。
「まず気をつけなきゃいけないのは、最初に感じたっていう視線だ。そもそも視線を感じるって、人間はどういう感覚で判断してるんだ。はい橘さん」
「え」
 いきなり振られて慌てる千夏。
 隠されたとは言え、まだ卓真の手の下から自分を見つめているだろう木目だか目々連だかが気にかかって、頭が上手く働かない。言葉に詰まり、助けを求めて風音と雪夫の顔を交互に見やった。
「ふむ、私がかわりに答えてよいかな、物部先生」
「どーぞ、柳川さん」
「人間が五感のどれかで視線を感じるというなら、それは触覚ではないか。味覚は論外として、目を向けられたからと言って不思議な音や匂いはたつまいし、背後からでも視線を感じることはあるのだから視覚ではあるまい」
「待て柳川。僕の意見では、視線は五感で感じているわけではない。目から変なビームが飛んでいるわけではあるまいし、肌で感じるわけではないだろう。いわゆる第六感というやつだ」
 雪夫の意見になにか言いかえそうとした風音を遮って、卓真が口を開いた。
「第六感と言われたらちょっと説明しづらいんでな、ちょっとその意見は置いといてくれ。じゃあ人の気配ってのはどうやって感じてる」
「第六感と言いたいな」
 雪夫が憮然として呟いたが、その隣で風音が胸を張って答えた。
「触覚と聴覚だ。空気の動きやわずかな音を感じて、周囲で動いている物があると動物は知覚している」
「えーと嗅覚もだと思うなぁ。汗の臭いとかさ」
 ちょっと自信なさげに千夏も付け加え、ますます雪夫が憮然とする。
「はは、悪い、えーと竹井、雪夫だっけか。あんたの意見はちょっと説明に向かないんで、とりあえず今回は彼女らの方向で話するわ。んで、触覚やらなにやらで人の動きを感じたとするわな。つまり人間は、自分の周りで動いている物があるかどうか、しっかり目で見て無くてもなんとなくは理解しているわけだ。じゃあちょっとこれを見てくれ」
 卓真はそう言って、もうあの大きな握り飯の痕跡の残らない右手をヒラヒラと振った。千夏、風音、雪夫の3人がその動く手を見つめる。
 卓真はしばらく無言で右手を振りつづけた。周囲には生徒たちのざわめきだけが響く。
「・・・えーと、見たけど、どうしたの」
 千夏の質問に、卓真がニヤリと笑った。
「はい注目いただきましたが、あんたらこっちに集中してたとき、少しでも動いたか」
「む」
 風音が何かに気付いたかのように声を上げたが、残る二人は不思議そうな顔をしている。見ろと言われたから見たのであって、当然そのために
「視線は動かしたが、どうかしたか」
 雪夫が、わずかにイラついた声で答えた。
「そうだな、視線っつーか目玉は動かしたよな。でも」
 そこまで卓真が言った時、独り言のように風音が呟いた。
「体は大きく動いていないし、当然空気もさほど動かない。むしろ『見るために動きを止めた』と言うべきだ」
 言葉を切られた卓真は、ニヤニヤしながら風音が言葉を続けるのを聞いた。
「今まで動いていたものが、集中するために動きを止めた。その変化が『見る気配』つまり我々が感じる視線の正体ということか。しかしまさかその木目が初めは動いていたが、千夏を見るために動きを止めたなどというわけではあるまい」
「おしいとこだけど、もうワンクッション欲しいな。何も気配が無くて空気が動かない状態をゼロ、周りで何かが活動してて空気が動いてる状態をプラスと考えよう。そうすると『視線を感じる』状態ってのは何になる」
 風音が口を開く前に、雪夫が早口で言った
「ゼロだ」
「もしくはゼロに近いプラスだ。そこに人は居るからな」
 補足に入った風音を、雪夫が軽く睨みつけた。その様子に卓真は微苦笑を千夏に向け、千夏は無言で「いつもこんな感じだよ」と肩をすくめて見せた。
「で、わたしは何が何だかさっぱりわからないんだけど」
 千夏の言葉に卓真が軽く頷き、最後のまとめに入る。
「つまり、だな。多感な思春期の少女は新学期といういつもより騒がしい時期を迎え、そこに先日運命の出会いを果たした超美形の転校生との再会を、ちょっと待て蹴るなすまん落ち着け、転校生やらなにやらでやっぱり普段以上に浮ついてしまったわけだが、しばらくしてから落ち着き始めたのが問題だと思うわけだ」
「えーと」
 まだ腑に落ちない様子の千夏に、風音が説明を付け加える。
「朝から少しソワソワしていた千夏は、周囲の空気を少し過敏に感じていたんだろう。しかし時間が経って千夏に落ち着きが戻り始めると、空気が思ったより静かだったことに気付いたわけだ」
 風音の言葉が切れるや否や、先程の仕返しとばかりに雪夫が口を挟んできた。
「本当ならそこで『今まで騒がしいと思ってたけど気のせいだったぜ』となるはずが、橘は『貴様、見ているな』と思ってしまったんだな」
「竹井、補足するのはいいが、そのたとえはわけがわからん」
 そこで卓真が、左手で机を軽く叩いて注意をうながした。
「『見られてる』って感覚は、実は『何も感じない』と同じなんだ。空気の動きがプラスからゼロに急に近づいたと思ったとき、そこに視線を感じてしまうのさ。しかも橘さんの机には、偶然大きな木目があった」
 卓真が一際大きな音を立てて机を叩き、研究発表を締めくくるように宣言した。
「そこに生まれた錯覚が、妖怪・目々連の正体でございます」
 卓真の左手が机から離れた。
 木目は確かにまだそこに残っていたし、なんとなく人の目を想起させる形を残してはいた。しかしそれはもう千夏を見つめてはいない。ただの大きな木目であった。
 気の抜けたように机を見つめる千夏の肩を、風音が軽く叩いた。
「どうだ、まだなにか感じるか」
「ん、いや、どうだろう。わかんないや」
「つまり気にならない、ということだな。やるものだな、物部」
 感心して頷く風音の横で雪夫が「でもさっきのはあくまで視線を感じるのが五感だという前提の上でだね」などと卓真に話しかけているが、あまり気にしないでよかろう。もとより彼は何事も無い写真に幽霊やUFOを見つけたりする人種であるのだし。
「ごめん、また助けられちゃった」
「言ったろ、困ったときはお互い様だって」
 卓真は手を振って笑い、そのまま雪夫をいなしながら、自分の席へと帰っていった。
 後ろの風音が昨日いったいなにがあったのかなどと聞いている気もするが、千夏も卓真にならって適当にいなしておくことに決めた。腹が減って目を回していた所を助けられたなどと、あまり口にしたくない。
 離れた席で雪夫と卓真が話しているのが聞こえた。
「なんだ、あのデカいおにぎりのあとにも、まだなにか食べてるのか」
「漬物漬物、っていうかデザート」
「どっちなんだ。いやそれはいいから妖怪の話だがな」
 また彼に迷惑をかけたのではないかと千夏は心配になった。しかしそのおかげで転校してきたばかりの彼に友人ができたのなら、多少のお返しにはなっただろうかと思いもした。
 彼は友人ができたと思っているだろうか、そしてその友人の中に千夏は入っているだろうか。入っているといいなぁとぼんやり考えながら、木目を少女漫画風味にアレンジすべく睫毛とお星様を描き足し始めた。
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