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適当に駄文。 書き物は妖怪メイン・・・でもないかも。 TRPGとか電源ゲーとかの話も。
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さすがにTRPGにして持っていくのに気が引けたネタを文章に。




 何百年も前から光差さぬはずの地下に、わずかに動く気配がする。いわゆる冒険者と呼ばれる者たちが、古代魔術師の手による遺跡へ潜り込んでいるのだ。数百年ぶりの客人に遺跡は歓喜の身震いをして、幾多の罠を作動させ始めた。

+ + + + + + + + + +
 ツンと鼻を刺す臭いの中を、皮肉交じりの笑い声が走った。
「やっぱり罠があるぜ」
 声を上げたのは軽装の盗賊だ。妖精族の血が混じって尖り気味の耳を自慢げにピクピク動かしながら、宝箱の前で何やら作業をしている。
 盗賊のしゃがみこんでいるのは、足一つ分ほどの幅しかない狭い通路だった。橋と言っても良い。通路の両脇には刺激臭を放つ酸の池が広がっていた。通路は今盗賊のしゃがみこんでいる宝箱まで続いており、その先は壁になっている。
「解除できるかの」
 通路の入り口から、金属鎧を着込んだ岩妖精が声をかけた。足元には強酸の池が広がっているというのに、恐れ気も無く立っている。もっとも通路の幅は岩妖精が進むにはあまりに狭すぎ、そこから先は進む気もなさそうであったが。
 岩妖精の声に盗賊が首を振った。
「難しいな。足場も悪ぃしよ」
 答えたその膝の上で、危なっかしく様々な金属片が揺れていた。鍵や罠をいじるための盗賊道具である。本来ならば足元に広げて使うものであったが、今の足場にそれほどの余裕は無い。かろうじて置かれたランタンですら作業の邪魔になっているようだった。
「大丈夫ですかねぇ」
 あまり心配もしていなさそうな声が岩妖精の頭越しに届いた。三人組の冒険者たちの最後の一人、人間の魔術師である。岩妖精の背後にいても酸の池が怖いのか、それともその臭気を嫌っているのかあまり近寄ろうとはしていない。しかし身長のせいで、盗賊からも岩妖精越しにその顔が良く見えた。
「銀の鍵もて竜の扉を開け、でしたかぁ。竜の扉とやらはありましたが、銀の鍵らしきものがあるのは、もうここだけですよ。そんな大事なものがあるなら、罠も相応のものではないでしょうかぁ」
「この液体はたいがい『相応のもの』だと思うがの」
 つぶやいた岩妖精が、銅貨を一枚池に放り込んだ。沈んでいく銅貨が泡を立てながら急速に溶けていくのを岩妖精の目は捉えていたが、薄明かりでは視界の利かぬ人間にはよく見えなかったかもしれない。
 盗賊が唇を歪めて笑った。
「心配すんな。箱を開けたら矢だか石ころだかが飛んでくる単純な奴だ。驚いて足滑らせた奴をドボンっと行かせたいんだろ。初めからわかってりゃ罠が動いても怖くないぜ」
「あぁそういうのなら私達は念のため逃げておきますねぇ」
 冷静と言うより冷たいと言われそうな早さで答えた魔術師は、そそくさと姿を消した。岩妖精はさすがに後ろめたそうに盗賊のほうを見たが、苦笑する盗賊が早く行けと手を振ったのを見て「神の加護のあらんことを」と呟いて仲間の後を追った。
「やれやれ、戦いの神様が盗賊の手助けしてくれんのかね」
 ぼやきながら盗賊は膝上の道具をしまうと、宝箱に手をかけた。
 できるかぎり箱の正面から体をずらし、姿勢を低くしながら蓋を持ち上げる。その正体がわかっていても、あえて罠を作動させるのは正直気が進まなかった。しかしこれが一番安全な方法のはずだ。
 緊張の一瞬。
 カチリという音と風を切る音が連続し、盗賊の肩口をかすめて何かが飛んでいった。
「……いや、そりゃないぜ」
 宝箱から発射され酸の池へ沈んでいったのは、銀色に輝く鍵のように見えた。
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無題
小説にはなるけどゲームには向かないネタってありますよね。無理やりゲームに落とし込むとしたら、

・罠発見の達成値が高ければ飛び出すものが銀だとわかる
・罠を受けたとき、体勢を崩さないかどうかの判定をさせる
・池は酸じゃなくて毒。落ちた鍵さえ無事なら、ダメージ覚悟で拾うという選択肢があるので。

これくらいやれば不条理な詰みだけは防げるでしょうが、ゲーム的な面白さを付加するのは難しそうです。
2007/10/16(Tue) 編集
Re:無題
不条理な積みこそが目的のトラップなのだがw
別に高速で射出されるわけでもないですし、体制崩したかどうかは判定無視でいいかと。
あとまあ所詮鍵ですので、彼らは盗賊くんが頑張って開けようと試みますよ。
 【2007/10/16】
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某大学RPG研究会OB。
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