適当に駄文。
書き物は妖怪メイン・・・でもないかも。
TRPGとか電源ゲーとかの話も。
karasawa氏よりのお題で、しめさば。
しめさば率はかなり低い。すみません。
なお没案としては
1.捕らえたハンターの前でひたすらしめさばを作り続ける吸血鬼
2.以前自作したダラダラするTRPGの世界でダラダラしめさばを作る少女達とそれを見ながらダラダラ格ゲーやる少年達
とかありましたが。
1はどうやって終わったものか構想が立て切れず、2に至ってはそもそも書く意味すら失いかねないダラダラぶりだったので…
しめさば率はかなり低い。すみません。
なお没案としては
1.捕らえたハンターの前でひたすらしめさばを作り続ける吸血鬼
2.以前自作したダラダラするTRPGの世界でダラダラしめさばを作る少女達とそれを見ながらダラダラ格ゲーやる少年達
とかありましたが。
1はどうやって終わったものか構想が立て切れず、2に至ってはそもそも書く意味すら失いかねないダラダラぶりだったので…
+ + + + + + + + + +
鬼狩り
茂平は熊撃ちの猟師である。
無論熊しか撃たぬわけではないが、熊撃ちとして名が知られていた。
熊撃ちは山で行う。なぜなら熊が山に棲むからである。
しかし今、茂平は夜の海辺を歩いていた。
生まれて初めて見る海であった。月も無いので水面の様子はわからなかったが、滝音よりもゆったりとして、しかし瀬音よりも力強い波の音に気が落ち着かなかった。
茂平の足元を歩く猟犬も嗅ぎ慣れぬ潮風に苛立っているのか、しきりに立ち止まって鼻を鳴らしては小さく唸っていた。
茂平の隣を歩く武芸者は、しばらく前まで茂平にさかんに話しかけてきたものだが、気の無い返事しか返さなかったのに飽いたのか、今では時折欠伸をする以外黙ってしまっていた。
茂平と犬とそして武芸者の前を歩くのは、近くの漁村の若者であった。右手に松明を、左手に身長ほどの長さの銛を杖代わりに、むっつりと黙りこくったまま一行の先導をしていた。
漁村からこの若者が来て、茂平に鬼退治を頼んだのはつい先日のことだ。
いつも月の無い夜には海から牛鬼が上がってきて牛馬を、ひどい時には人を獲って食うのだと聞いた。
腕に覚えのある漁師が牛鬼退治に出かけたもののそれきり戻ってこぬので、熊撃ちで名の知れた茂平に頼みに来たのだと若者は頭を下げた。
(鬼などおらぬであろうに)
そう思いはしたものの、茂平はその話を受けた。戻らなかった漁師が若者の父だという話よりも、礼金は払うと言う言葉が心を動かした。
若者に連れられて漁村へ向かう道中、鬼の噂を聞きつけたという武芸者と出会った。武芸者は「牛鬼とやらを斬り捨てて名を上げん」と笑って業物らしい刀を抜いて見せたが、茂平は(猟に出かけるのに刀は使わぬであろう)としか思わなかった。茂平自身腰に山刀は帯びているもののこれは藪払いと獲物へのとどめに使うもので、やはり猟は犬と鉄砲でやるものだと考えた。
そういうわけで、茂平たちは金のため、名声のため、敵討ちのために月の無い浜辺を歩いているのであった。
そのうち、足を止めた武芸者が退屈そうに呟いた。
「なにもおらぬな」
若者が鬱々と応えた。
「これ以上進んでも岬しかありません。岩も多く夜には危険な場所です」
暗に「今日は鬼も出ぬであろう。戻らぬか」と言っている二人に茂平は首を振った。
「なにもおらんのは恐ろしいもんがおるからじゃ。まだ探しとらん場所があるなら行くだけじゃ」
武芸者は不満げに「むう」と唸り、若者は無言で頷いて歩き始めた。
岩だらけの小高い丘を登り、岬へと出た。昼間ならば広がる海を一望できたのだろうが、今は物悲しい波音と暗闇がひろがるばかりだった。
武芸者が不満げに口を開いた。
「やはりなにもおらぬではないか」
その言葉が終わるか終わらぬかの時、茂平の足元で犬が激しい唸り声を上げた。茂平が銃を構え、武芸者がはっとしたように刀に手をかけた。二人が周囲を見回したが、若者だけが驚いて犬に目を向けていた。それがいけなかったのか。
犬の方を振り返った若者の死角、遥か下方の海から躍り上がるように牡牛よりも大きな影が飛び出してきた。
ここから先のことは茂平も良く覚えていない。
悲鳴も上げずに影に組み敷かれる若者。松明が岬から海へと転げ落ち闇が落ちる。武芸者の怒声と金属の砕ける音。飛び掛る犬の気配。犬の悲鳴。そして衝撃。
ふと茂平は目を覚ました。
冷たい。地面が無い。暗い。
いかん海に落ちた、と気づいた時にはすでに腕は水を掻いていた。川や滝壺に落ちたことは何度かあった。それを体が覚えていたのか、考える前に顔は海面に出ていた。
気を失っていたのはほんの一瞬のことであっただろう。なにかに、おそらくあの巨大影か、それともさらにそれに弾かれた猟犬かに跳ね飛ばされて、そして海へ落ちたのだ。
立ち泳ぎしながら茂平は全身を触って怪我の有無を確かめた。胸が痛いが骨は折れておらぬようだ。腕も脚も動く。背中がヒリヒリするのは海面で打ったのか。腰の山刀も無事だ。
怪我はない。だが大事なものが無くなっていた。
(銃は、薬と弾はどこじゃ。犬はどこへ行った)
焦って辺りを見回しはしたものの、灯りも無い夜の海では何も見えはしなかった。そも銃があったところで、火縄も湿って使い物にはならなかったであろうけれど。
戦うすべを失った茂平の頭上から、野太い悲鳴が聞こえた。武芸者の声であったような気もしたが、判別できるはずもなかった。
(ここは逃げるかよ)
岬に背を向けて泳ぎ去ろうとした茂平の背後から、何かが水に落ちる音が追いかけてきた。あの巨大な影が武芸者の体でも投げ込んだか、それとも岩でも転がり落ちてきたか。そう思った茂平の考えは、すぐに裏切られた。波を掻き分ける音がゆっくりと近づいてきたのだ。飛び込んだ何かが茂平を追ってきていた。
焦った茂平は慌てて泳ぎ去ろうとしたが、それでも背後からの水音は近づいてくる。茂平は観念して泳ぐのをやめ、腰の山刀を抜いて身構えた。
沈まぬためにせわしなく動く茂平の足に、何か冷たいものが触れてすぐに離れていった。怯えた魚が逃げ出したものか。
未知への恐怖と命の危機を前にして、茂平の考えたことは一つだった。
(魚か。腹が減ったのう)
何かが麻痺してしまったのか、それとも本当に肝が据わってしまったのか、茂平の頭の中は魚を食うことで一杯になった。
山育ちの茂平は海の魚などほとんど知らぬ。庄屋がなんぞの祝いのときに見せびらかした鯛か、時折海の者が売りに来る鯖くらいしか見たことが無かった。
(鯖が食いたいな)
もっとも、傷みやすい鯖がそのまま山で手に入るわけも無い。茂平が食ったのは塩と酢でしめたものであったが、しかしそんなことも知らぬので茂平にとってはあれこそが鯖、海の魚のほぼすべてであった。
ふと気づくと近づく水音はかなりの大きさになっており、暗い中にもさらに黒々とした巨大な影が見えるくらいまでになっていた。
茂平は山刀を握りなおし、大きく息を吸って鋭く吐いた。鯖の独特の酸味が思い起こされ唾が湧いた。
(そうじゃ、こやつを倒したら金ではなく鯖をもらおう)
そう思った途端、俄然闘志が湧いてきた。生き延びるために敵と戦うのではなく、己が欲のために獲物を狩るのだと、そう思うだけで勝てる気がしてきた。
(こやつを倒して飽きるほど嫌と言うほど鯖をもらって、食いまくってやるのじゃ)
目と鼻の先まで近づいてきた影が、急に滑稽に思えてきた。
名声のためでも敵討ちのためでもなく、ましてや金のためでもなく。ただの鯖ごときのためにおまえは狩られるのだと大声で笑いたくなった。
(そうじゃ、わしは猟師じゃからな。食うために狩るのじゃ)
山刀を片手に、茂平は影のほうへと泳ぎ始めた。
茂平は熊撃ちの猟師である。
無論熊しか撃たぬわけではないが、熊撃ちとして名が知られていた。
熊撃ちは山で行う。なぜなら熊が山に棲むからである。
しかし今、茂平は夜の海辺を歩いていた。
生まれて初めて見る海であった。月も無いので水面の様子はわからなかったが、滝音よりもゆったりとして、しかし瀬音よりも力強い波の音に気が落ち着かなかった。
茂平の足元を歩く猟犬も嗅ぎ慣れぬ潮風に苛立っているのか、しきりに立ち止まって鼻を鳴らしては小さく唸っていた。
茂平の隣を歩く武芸者は、しばらく前まで茂平にさかんに話しかけてきたものだが、気の無い返事しか返さなかったのに飽いたのか、今では時折欠伸をする以外黙ってしまっていた。
茂平と犬とそして武芸者の前を歩くのは、近くの漁村の若者であった。右手に松明を、左手に身長ほどの長さの銛を杖代わりに、むっつりと黙りこくったまま一行の先導をしていた。
漁村からこの若者が来て、茂平に鬼退治を頼んだのはつい先日のことだ。
いつも月の無い夜には海から牛鬼が上がってきて牛馬を、ひどい時には人を獲って食うのだと聞いた。
腕に覚えのある漁師が牛鬼退治に出かけたもののそれきり戻ってこぬので、熊撃ちで名の知れた茂平に頼みに来たのだと若者は頭を下げた。
(鬼などおらぬであろうに)
そう思いはしたものの、茂平はその話を受けた。戻らなかった漁師が若者の父だという話よりも、礼金は払うと言う言葉が心を動かした。
若者に連れられて漁村へ向かう道中、鬼の噂を聞きつけたという武芸者と出会った。武芸者は「牛鬼とやらを斬り捨てて名を上げん」と笑って業物らしい刀を抜いて見せたが、茂平は(猟に出かけるのに刀は使わぬであろう)としか思わなかった。茂平自身腰に山刀は帯びているもののこれは藪払いと獲物へのとどめに使うもので、やはり猟は犬と鉄砲でやるものだと考えた。
そういうわけで、茂平たちは金のため、名声のため、敵討ちのために月の無い浜辺を歩いているのであった。
そのうち、足を止めた武芸者が退屈そうに呟いた。
「なにもおらぬな」
若者が鬱々と応えた。
「これ以上進んでも岬しかありません。岩も多く夜には危険な場所です」
暗に「今日は鬼も出ぬであろう。戻らぬか」と言っている二人に茂平は首を振った。
「なにもおらんのは恐ろしいもんがおるからじゃ。まだ探しとらん場所があるなら行くだけじゃ」
武芸者は不満げに「むう」と唸り、若者は無言で頷いて歩き始めた。
岩だらけの小高い丘を登り、岬へと出た。昼間ならば広がる海を一望できたのだろうが、今は物悲しい波音と暗闇がひろがるばかりだった。
武芸者が不満げに口を開いた。
「やはりなにもおらぬではないか」
その言葉が終わるか終わらぬかの時、茂平の足元で犬が激しい唸り声を上げた。茂平が銃を構え、武芸者がはっとしたように刀に手をかけた。二人が周囲を見回したが、若者だけが驚いて犬に目を向けていた。それがいけなかったのか。
犬の方を振り返った若者の死角、遥か下方の海から躍り上がるように牡牛よりも大きな影が飛び出してきた。
ここから先のことは茂平も良く覚えていない。
悲鳴も上げずに影に組み敷かれる若者。松明が岬から海へと転げ落ち闇が落ちる。武芸者の怒声と金属の砕ける音。飛び掛る犬の気配。犬の悲鳴。そして衝撃。
ふと茂平は目を覚ました。
冷たい。地面が無い。暗い。
いかん海に落ちた、と気づいた時にはすでに腕は水を掻いていた。川や滝壺に落ちたことは何度かあった。それを体が覚えていたのか、考える前に顔は海面に出ていた。
気を失っていたのはほんの一瞬のことであっただろう。なにかに、おそらくあの巨大影か、それともさらにそれに弾かれた猟犬かに跳ね飛ばされて、そして海へ落ちたのだ。
立ち泳ぎしながら茂平は全身を触って怪我の有無を確かめた。胸が痛いが骨は折れておらぬようだ。腕も脚も動く。背中がヒリヒリするのは海面で打ったのか。腰の山刀も無事だ。
怪我はない。だが大事なものが無くなっていた。
(銃は、薬と弾はどこじゃ。犬はどこへ行った)
焦って辺りを見回しはしたものの、灯りも無い夜の海では何も見えはしなかった。そも銃があったところで、火縄も湿って使い物にはならなかったであろうけれど。
戦うすべを失った茂平の頭上から、野太い悲鳴が聞こえた。武芸者の声であったような気もしたが、判別できるはずもなかった。
(ここは逃げるかよ)
岬に背を向けて泳ぎ去ろうとした茂平の背後から、何かが水に落ちる音が追いかけてきた。あの巨大な影が武芸者の体でも投げ込んだか、それとも岩でも転がり落ちてきたか。そう思った茂平の考えは、すぐに裏切られた。波を掻き分ける音がゆっくりと近づいてきたのだ。飛び込んだ何かが茂平を追ってきていた。
焦った茂平は慌てて泳ぎ去ろうとしたが、それでも背後からの水音は近づいてくる。茂平は観念して泳ぐのをやめ、腰の山刀を抜いて身構えた。
沈まぬためにせわしなく動く茂平の足に、何か冷たいものが触れてすぐに離れていった。怯えた魚が逃げ出したものか。
未知への恐怖と命の危機を前にして、茂平の考えたことは一つだった。
(魚か。腹が減ったのう)
何かが麻痺してしまったのか、それとも本当に肝が据わってしまったのか、茂平の頭の中は魚を食うことで一杯になった。
山育ちの茂平は海の魚などほとんど知らぬ。庄屋がなんぞの祝いのときに見せびらかした鯛か、時折海の者が売りに来る鯖くらいしか見たことが無かった。
(鯖が食いたいな)
もっとも、傷みやすい鯖がそのまま山で手に入るわけも無い。茂平が食ったのは塩と酢でしめたものであったが、しかしそんなことも知らぬので茂平にとってはあれこそが鯖、海の魚のほぼすべてであった。
ふと気づくと近づく水音はかなりの大きさになっており、暗い中にもさらに黒々とした巨大な影が見えるくらいまでになっていた。
茂平は山刀を握りなおし、大きく息を吸って鋭く吐いた。鯖の独特の酸味が思い起こされ唾が湧いた。
(そうじゃ、こやつを倒したら金ではなく鯖をもらおう)
そう思った途端、俄然闘志が湧いてきた。生き延びるために敵と戦うのではなく、己が欲のために獲物を狩るのだと、そう思うだけで勝てる気がしてきた。
(こやつを倒して飽きるほど嫌と言うほど鯖をもらって、食いまくってやるのじゃ)
目と鼻の先まで近づいてきた影が、急に滑稽に思えてきた。
名声のためでも敵討ちのためでもなく、ましてや金のためでもなく。ただの鯖ごときのためにおまえは狩られるのだと大声で笑いたくなった。
(そうじゃ、わしは猟師じゃからな。食うために狩るのじゃ)
山刀を片手に、茂平は影のほうへと泳ぎ始めた。
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Re:無題
本日昼飯を泣きながら食べました。
いつものパターンを崩さないお客様が一緒で…
新しいとこ試してみたかったなぁ
いつものパターンを崩さないお客様が一緒で…
新しいとこ試してみたかったなぁ
Re:無題
>割と最初に挙げた台詞を踏まえてる感じでグッジョブです。
意識はしてたんで評価してもらってありがたいです。
>しかししめさばという言葉の持つカオスな語感を活かしきれていないのが残念。いや、そんなイメージを持ってるのは俺だけか?
カオス…か? アレは美味い食い物です。という認識しかないのだが
意識はしてたんで評価してもらってありがたいです。
>しかししめさばという言葉の持つカオスな語感を活かしきれていないのが残念。いや、そんなイメージを持ってるのは俺だけか?
カオス…か? アレは美味い食い物です。という認識しかないのだが
無題
カオスという方向性でならば、昔某サイトで、暗黒舞踏なOPと「りゅん」で有名なセンチメンタル何某のレビューというかプレイ日記で主人公の名前をしめさばにしていたなぁということを思い出した。だから何と言うこともないのだけど。
そういやここ一年くらいしめさば食ってないな…
そういやここ一年くらいしめさば食ってないな…
Re:無題
>プレイ日記で主人公の名前をしめさばにしていたなぁ
そもそもゲームがカオスなので。
>そういやここ一年くらいしめさば食ってないな…
この文章書くためにわざわざ置いてある食堂探して食いましたw
そもそもゲームがカオスなので。
>そういやここ一年くらいしめさば食ってないな…
この文章書くためにわざわざ置いてある食堂探して食いましたw
カウンター
プロフィール
HN:
双葉稀鏡
性別:
男性
趣味:
TRPG
自己紹介:
いつもは別のハンドルを使っている。
某MMOの属性武器の通称と同じなのは嫌なので、こっちを名乗る。
某大学RPG研究会OB。
某MMOの属性武器の通称と同じなのは嫌なので、こっちを名乗る。
某大学RPG研究会OB。
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