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適当に駄文。 書き物は妖怪メイン・・・でもないかも。 TRPGとか電源ゲーとかの話も。
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midorimu氏からのお題で「白いパンダ」
だんだん対象年齢が低くなっている気がします。

ちなみに第一案は、世界樹の迷宮ネタでしたが、どうもいまいち主題を生かしておらず、没。
以下、少し抜粋
 そこは一面の銀世界。季節をを問わず雪が降り積もる、世界樹の迷宮第三層。
 雪だるまの出来損ないのような小さな怪物が、穴のような口から冷たく輝く吹雪を吐いた。
 相対するアルケミストの右手には、白熱する輝きが蠢動している。
 凍てつく吹雪と、焼き尽くす白熱が交差する。
「かぁぁくねつ、ゴォッドフィンぐぁああああああああああ!?」
 響いた断末魔に、年老いたブシドーと逞しいソードマンが顔を見合わせ、異口同音に叫んだ。
「「メディーック!」」
 しかし返事はない。メディックはただの屍のようだ。
「「メディーック!? メディーーーーーーーーック!!」」

色々どうよ?
没案は置くとして、以下本文。

+ + + + + + + + + +
氷上の爪痕事件
 動物園に夜が来た。
 僕は暗い園内を歩き、檻の鍵を開けて回った。
 頭上をフクロウの郵便屋たちが追い越していった。
 礼儀正しい鹿さんは、僕を見ると「こんばんは」と頭を下げた。
 やんちゃなアライグマの兄弟たちは、僕が鍵を開けるときゃっきゃと笑いながら駆け出していった。
 さて、最後は目当ての檻だ。
 最後に開けたのは、狐のフォックス氏のものだ。
 しかしかなり待たせてしまったはずなのに、フォックス氏は僕の方を興味なさげに一瞥しただけで、フクロウたちが投げ入れて行ったのであろう新聞を読みふけった。
 僕がフォックス氏の邪魔にならぬように檻の片隅で膝を抱えて座った時、外から「こんばんは」と穏やかな声が聞こえた。
 フォックス氏が新聞から顔を上げて、来客を迎えた。
「やあ、こんばんはティーゲル君。久しぶりだねぇ」
 入ってきたのはベンガル虎のティーゲル氏。彼は困ったように首をひねりながら、フォックス氏へ弁解した。
「しばらく来なかったのは悪かったと思ってるよ、フォックス。でも先日開かれた写生大会で、妻があまりに多くの人間を見て神経質になっていたんだ」
「わかってるさ、ティーゲル君。君が愛妻家で恐妻家だということはね。そろそろ子供でも作ったらどうだい。細君だけじゃなく、人間たちも喜ぶだろう」
 そう言ってフォックス氏は僕の方へ目を向けた。
「もちろんティーゲル君の細君が、自分の子供を見世物にしたくはない、というなら話は別だがね」
 思わず僕は肩をすくめた。彼はいつだって皮肉屋なのだ。そしていつだってティーゲル氏が場をとりなす。
「僕は今の生活に満足だがね、フォックス。毎日十分な食事にありつけるのだもの。ところでそれは今日の新聞かい。君ならきっとエテ組とエイプスの抗争に夢中になると思っていたよ」
 それを聞いたフォックス氏は綺麗な形にとがった鼻を鳴らした。ティーゲル氏の言葉が気に入らなかったらしい。
「あんな馬鹿騒ぎに興味は無いさ。僕が気にしているのはこれだ」
 フォックス氏が押しやった紙面には、大きな見出しが見えた。
『ペンギン公、何者かに捕食さるる』
 ティーゲル氏が驚いて大きな声を出した。
「ペンギン公だって? 園内一のミスター燕尾服じゃないか」
「そうさ。去年だって飛び入りのスワロー君がいなければ、コンテストは彼のものだった。僕は今でも、園外のものを選に入れたのは間違いだと思っている。しかもこれでペンギン公は雪辱の機会も失ったわけだ」
 そこまで言って、フォックス氏は立ち上がってうろうろと、偶然にか故意にか、僕の目の前を行ったり来たりし始めた。
「ティーゲル君、悪いがその記事を音読してくれないか。文字を読むのと音で聞くのとでは、もしかしたら違う感想を抱くかもしれない」
「いいともフォックス。昨夜未明、付属水族館のペンギンコーナーにおける氷上にて、ペンギン公の遺体の一部が発見された。公は頚部を強烈な一撃で叩き折られたことで即死した模様。遺体は激しく損壊しており、牙のあとがあった。また氷上に大きな爪痕らしき物が残っており、動物園当局は大型肉食獣の犯行と判断。ペンギンコーナーは鳥目のペンギン公を配慮して照明がついていたものの、ペンギン公が抵抗した様子がないため、当局は氷上にて保護色による隠密行動に長けたシロクマ氏を容疑者として拘留中」
「なんと愚かな! 耳で聞くとますます愚かだな」
 聞き終えるや否や、フォックス氏は激昂して吠えた。
「まず大きな用語の間違いがある。シロクマ君の毛色は保護色と呼ぶべきではない。しかしまあいい、問題はその程度の根拠で彼を拘留した動物園だ」
 それについては、関係者である僕にも一言ある。じっと見つめる僕の視線に気づいたか、フォックス氏はすぐに冷静になって頭を振った。
「いやそうだな、彼がここにいて僕の言葉を聴いているということは、人間たちもそれが絶対に正しいとは思っていないということか」
「シロクマ君というのはね、フォックス。以前有名になっていた彼のことだろうか」
「以前、ではなく今でも有名だよティーゲル君。そうとも、育児放棄されて人工授乳で育った彼のことさ。小さくかわいい頃ならいざ知らず、もういい歳だろうに今でも人間たちに客寄せパンダに使われている憐れな彼のことだとも」
「ではフォックス、君はそのシロクマ君が犯人じゃないと思ってるのだね」
「思ってるんじゃない。確信しているのさ。いいかいティーゲル君、これは簡単な推理だよ」
 フォックス氏は腰を落ち着け、ティーゲル氏にむかって説明を始めた。いや、たぶん彼は僕に聞かせたがっているのだろう。
「いいかい、ティーゲル君。たしかにこれは大型な獣の仕業だとも。肉食か雑食かは置いておくとしてもね。君にだってペンギン公の首の骨を折るくらいのことは、朝飯前だろう?」
 この質問に対して、ティーゲル氏はきわめて慎重に答えた。
「そうかもね、フォックス。やったことはないけど、できるかもしれない」
「できるだろうさ、インドで多くの戦いを経験したんだろう? まあそれはともかく、ティーゲル君、もし万が一君がペンギン公を殺害しに行ったとしたら、氷に爪痕など残すかい?」
「いや、できるだけそういう痕跡は残さないよう腐心するだろうね」
「そういう意味じゃないよ。もう少し頭を働かせたまえ。君なら、肉食獣にとって大事な爪で、踏み固めた氷なんていう硬いもので無造作に引っ掻いたりするものかね?」
「しないね。研ぐどころか欠けてしまうかもしれないじゃないか。歩く時だって大事にしまっておくさ」
「そうとも。なのに犯人は爪痕を残している。これはおそらく飼育係が紛失したか置き忘れたかした熊手か何かで作られた、偽の痕跡だよ」
「じゃあ犯人は道具が使える獣かい。まさか人間が、それともサル山のギャング達か」
 フォックス氏は呆れたように首を振った。
「さっきも言っただろう、これは大型の獣による犯行だ。人間にも猿達にも、一撃でペンギン公の首の骨を折るような打撃は加えられまいよ」
「しかし大きな獣で道具が使えるものと言っても」
「それに、どうやってペンギン公まで近づいたか、という問題もある。照明が灯っているのに公のそばまで近寄ることの出来る獣。顔見知りの犯行か? いや、たとえ顔見知りでも、大きな獣が身構えれば誰だって警戒するさ。僕だって、ティーゲル君、君が前傾姿勢で睨みつけてくれば、ギョッとして東洋のあの神秘的な武術の構えをとってしまうだろう」
「じゃあいったい犯人はどうやって近づいたのさ?」
「これは当局の考えも半ば正しいね。保護色さ。氷の色の上で、白い体色は目立たなくなる。煌々と照明がついていれば、ますますもって見えづらかっただろうね」
「じゃあなにかいフォックス。犯人は色が白くて道具が使える大きな獣なのかい。でもそんな獣は動物園にはいないよ」
 フォックス氏は再度首を振った。今度は呆れたようにではなく、ゆっくりと、間違えた子供に教え諭すように。
「熊手を引っ張るくらいならね、ティーゲル君、さほど器用でなくてもいいのだよ。棒が持てればいいのだ。それに体色は犯行時に白ければいいのであって、普段からそうある必要は無い」
「どういうことだい? そろそろズバリと犯人を教えてくれてもいいだろう」
「では白い体色のことから説明しようか。最近、人間の子供達が写生大会でやってきたのは君も覚えているよね」
「ああ、おかげで妻が落ち着かなくてね」
「その時に、イタズラな子供や慌てた子供が絵の具を投げたり落としたりしたことはなかったかな?」
「そういうことはなかったね。だがありそうな話だよ」
「ああ、もし君の檻のすぐ前に落とされた絵の具があったとしたら、それは何色だろうね」
「そうだね、僕を描こうとしていたのなら、黄色か黒じゃないだろうか。僕の毛皮はその色が最も多いからね」
「では、白い体毛を持つ獣の檻に、白い絵の具が落ちることもけっして少なくは無いだろうね。特にその獣が人気者ならば、多くの子供が近づくだろうし」
 ティーゲル氏は考え込んで首をひねった。
「たとえばシロクマ君のところにかい?」
「彼だけでは無くて、だよ。そしてその落ちていた絵の具を水場に溶かして、自分の体を白く染め上げることも可能だろうね。無論全身に塗る必要は無いんだ。白くない部分だけでいい。事件現場のペンギンコーナーには遊泳プールの大量の水があるのだからして、犯行後にそこで体を洗えば、多少の絵の具はプール内に拡散して見分けがつかなくなる」
「つまりこう言いたいのかい? 犯人は一部に白い体毛があって、棒を掴むことの出来る大型な獣だと」
「そういことさ、ティーゲル君。じれているようなので言ってしまうがね、僕は犯人はパンダ氏だと推理した」

「パンダ氏は勿論君が知っている通り、竹を持ってその笹の葉を食べることの出来る、比較的器用な手を持っている。その体毛に関しては言うまでもなく、白黒二色だ。おそらく彼の水飲み場は、今朝方『偶然踏みつけてしまった絵の具』で灰色に染まっていただろうね。犯行を隠す意図があるなら、白いままのはずがない」
「しかしフォックス。パンダ氏は草食性だ。ペンギン公の死体は食い荒らされていたんだよ」
「よく誤解されるがね、ティーゲル君。パンダ氏は笹しか食べられないわけじゃない。そもそも、笹や竹はパンダ氏の胃腸には消化の難しいものだのだよ。彼は好んでそれを食べているが、本来は雑食性なんだ。与えれば肉だって食べる。そうだね?」
 フォックス氏は僕の方を見て、確認するように尋ねた。
 そのとおり。パンダ氏は肉だって食べる、らしい。最近は与えてないとのことで僕も見たことはないが、昔は彼らの一族に肉を与えたこともあったと聞いている。
「わかったよフォックス。たしかにパンダ氏には犯行が可能だったかもしれない。でも彼には動機がないだろう。好んで竹を食べるパンダ氏が、どうしてペンギン公を狩りになんか出かけたんだ?」
「ティーゲル君、お人よしの君にはわからないだろうがね、パンダ氏の狙いはペンギン公ではないよ」
 フォックス氏は悲しそうに夜空を見上げて、言葉を続けた。
「パンダが客寄せパンダに嫉妬したのさ」
「どういう意味だい、フォックス?」
 そこまで聞いて、僕はフォックス氏の檻の片隅から立ち上がった。聞こうと思ったことは全て聞いた。あとはこれからどうするのか、それを考えるだけだ。
 立ち去ろうとする僕の背中を、フォックス氏の言葉が追いかけてきた。
「これらの推理も、証拠がなければただの推測だからね。パンダ氏の水飲み場が濁ってなかったり、彼の寝所に置き忘れられた熊手が無かったりしたら、さっきのは全て僕の邪推さ。犯人はやはりシロクマ君なのだろう」
「どうしたんだいフォックス、なんだか悲しそうだけど」
「なんでもないよ。さあ今夜はどこへ行こうかティーゲル君。まだ夜は始まったばかりだ。鳥たちのコンサートでも覗いてみようかね」
 今日も動物園の夜は更けていく。
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無題
おぉ、乙です!w

>対象年齢

確かに、小学校の図書室に、中学年以上向けとしておいてありそうな感じですね。良い意味で。w

きっと「名探偵フォックス」みたいなタイトルで、貸し出しカードには女子を中心とした名前がズラリ…

何はともあれ、ありがとうございました。w
midorimu 2008/04/10(Thu) 編集
Re:無題
なんかこのシリーズ、続けたくなってきましたよw
 【2008/04/10】
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