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適当に駄文。 書き物は妖怪メイン・・・でもないかも。 TRPGとか電源ゲーとかの話も。
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おそらく今年書き収め。
いつもとは違った方向性の模索と言うかなんというか・・・

模索しないとpixvの企画にのれないから、というのが問題だったわけだが
模索したところで企画の趣旨にあってるかどうかは、

知らぬ!断じて!



追記:っとお、忘れていた!
戯言氏、某キャンペーン中に話していた電波を使用していますので、事後承諾を!
ええ、承諾しか認めませんがw

+ + + + + + + + + +
イヌガミツキ

ボクがはじめて彼女とであったのは、寒い夜の公園でのことだった。
行きたくもない学習塾からの帰り道、いまにも雪が降ってきそうな曇った夜だった。
ボクは白い息を吐きながら、冷めた夕食が待つ家へと急いでいた。
ほんとうは少しも、まったく、これっぽっちも、寄り道なんかする気はなかった。
その月の小遣いも使い切ってて、缶コーヒーを買う余裕もなかったんだ。
さっさと家に帰るのが、冷え切った体を温める一番いい方法だった。
でも仕方ないじゃないか?
横目に通り過ぎようとした暗い公園から、甲高い犬の悲鳴が聞こえたんだ。
とっても痛々しくて、哀れを誘う甲高い悲鳴だったから、思わず生垣から覗き込んじゃった。
まだ小さな仔イヌだったよ。
そのときは暗くて毛色もわからなかったけど、ただ小さなイヌだってことは影でわかった。
そのイヌは首に巻かれた縄で、明りの消えてしまった街灯へ繋がれていた。
そして、3人ほどの男たちに棒で殴られたり、蹴り回されたりしてた。
男たちがタチの悪い遊びをしてるんだってことは、聞こえてきた馬鹿げた笑い声からすぐに想像できた。
だからボクは、仔イヌにむかって駆け寄ろうとした。
ああ、勘違いしないで!
ボクは別に正義感に満ち溢れてもいないし、喧嘩に自信があるわけでもない。
ただ、ただそんなボクが思わず助けようとしてしまうほど、仔イヌの泣き声は切なく聞こえたんだ。

ああ、うん、まあここでボクが男たちを一蹴したり、一喝して改心させることができれば、
そりゃかっこいいんだろうけど・・・
さっき言ったね。ボクは「駆け寄ろうとした」。でも、できなかったんだ。
だってもっと早く駆け込んだ影があったから。
ボクの横を風のように通り過ぎて、
生垣を一跨ぎに飛び越して、
男たちの1人を地面に叩き伏せて、
その影は曇った夜空を見上げて雄たけびをあげた。
ボクは仔イヌの親が助けに来たんだと思った。
大きなイヌが、それともオオカミが?、家族の窮地を救いに駆けつけたんだと思った。
でも、どんなに暗くても、それが間違いだってことはすぐにわかった。
だってその影は、セーラー服のスカートを翻して空へ跳んだから。
それにその影は、長い髪をなびかせて男たちへ襲いかかったから。
しかしその影は、夜の空気に瞳の残光だけを置いて、縦横無尽に駆け回ったんだ。

その後のことはよくは知らない。
違うよ、逃げたりなんかしてない!
もちろん気を失ったわけでもない。
駆け回る影の雄たけびや、男たちの怒号と悲鳴が聞こえる中で、
ボクは当初の予定通り、仔イヌにむかって走っていったんだ。
仔イヌはすごく怯えてた。
たくさんイジメられたから。まわりでなにかが争ってるから。
だからボクが駆け寄って頭を撫でてやると、甘えた声をだして頬をすり寄せてきた。
「よーし、もう大丈夫だぞ。怖いことなんかないんだからな」
・・・と言ったボクは、たぶん仔イヌじゃなくて自分にむかってしゃべってた。
「ははは、なんだおまえ、甘えん坊だなぁ。そんなんじゃ強くなれないぞ」
布が引き裂かれるような音が聞こえた・・・気がしたけど気のせいだろう。
「ああ、そうだね、強くなんかならなくてもいいよね」
肉を打つような音が聞こえた・・・はずはないと思う。
「いいんだよ、おまえは醜い世の中のことなんか、なぁんにも知らなくていいんだからね」
硬いものが砕ける音と悲鳴・・・なんてした覚えはない。
ボクはずっと、ずーっと仔イヌと抱き合っていた。
いまにも雪の降りそうな寒い夜に、仔イヌの体はとても暖かかった。

いつのまにか公園から男たちは居なくなってて、1人の女の子だけが立ってた。
そのセーラー服はボクの学校の制服だったし、
長い髪をめんどくさそうにかきあげている姿に見覚えがあった。
同じ学年にこういう子が居た気がする。あんまり学校で見た覚えはなかったけど。
その子が、仔イヌと抱き合ってるボクを見て口を開いた。
「おまえ、なにしてんだ?」
「この子が怖がってたから、落ち着かせてたんだよ」
「ふーん」
暗い中でもきらきら光る眼が、ボクを頭から爪先まで舐めた。
ほんとうに、文字通り舐められてるんじゃないかと錯覚したよ。
視線が爪先から顔まで逆に上がって来たときは、いろいろとゾクゾクした。
その子はボクの顔に視線をとどめて、首をかしげて言った。
「あったかそうだねぇ」
「うん」
「そいつ、貸してよ」
無造作にその子は手を伸ばして、ボクから仔イヌを奪い取った。
「ああ、あったかいね」
歯をむき出して笑った彼女は、そのまま言った。
「犬上 慶子(いぬがみ けいこ)」
え、なんだろう?と思って首をかしげると、ボクのほうをまじまじと見つめている。
ああ、自己紹介のつもりなんだと気付いたのは、数瞬後のことだ。
慌ててボクが名乗ると、犬上さんは1つうなずいて、
「じゃあね」
と言って仔イヌを抱えたまま去っていった。
仔イヌを繋いでいたはずの縄は、強い力で引き千切られたようなボロボロの断面を残して、
ボクの足元に力なくのびていた。

犬上さんとは、その後も何度も出会った。
学校で遭ったことは、ほんの何度かしかない。彼女はよくサボっているようだった。
一度だけ、路地裏でヤクザを叩きのめしているのに出くわしたこともあった。
そのときはボクは知らんふりして通り過ぎたけど・・・あとで救急車は呼んでおいた。
一番たくさん会ったのは、やっぱりあの公園だった。
塾の帰り、部活の帰り、ぶらりと出かけた散歩のとき。
ふと思い立って公園を見ると、犬上さんが居るのだ。
あの仔イヌが一緒に居る時もあったし、彼女1人でぼーっと座ってる時や、
ブランコを漕いでる時もあった。
ボクが彼女を見つける前から、彼女はボクに気付いているようで、
声をかけると「おう」とか「ああ」とか応じて片手を挙げた。
その後なにをするというわけでもないけど、ただダラダラと話をして、
適当なところで犬上さんが「じゃ」と言って帰るのがいつものことだった。

あるとき、犬上さんが話してくれたことがある。
「あたしの家には犬神ってのがついてるらしい。しってるか『いぬがみ』」
ブランコに腰掛けたまま、犬上さんが爪先で地面に『犬神』と書いた。
文字よりも読み方よりも、スラリとのびた足と白いソックスが眩しかったのを覚えている。
「イヌを縄に繋いでな、目の前にエサを置くんだ。絶対取れないとこ、でももう少しで届きそうなとこに。
で、そのまま何日も何日も放置するのな。ガリガリに痩せて死にそうになっても、許さない」
ボクの足元で駆け回る仔イヌが『犬神』の文字を消していった。
犬上さんはそれを見下ろしながら、言葉を続けた。
「で、本当にイヌが死にそうな直前、思いっきり首を伸ばしてエサ食おうとして狂いかけてるその首を、
バッサリ刀で切り落とすんだ。で、その首を祀ったのが犬神っつーの」
「なんでそんなことするのさ」
「呪術だってさ。飢えたイヌの魂を使って、いろいろやるんだよ」
「いろいろって?」
「いろいろさ。誰かを呪ったりとか・・・一番いいのは、やっぱり金儲けらしいけど」
なんでそんなものが金儲けに繋がるんだろう、と言うボクに、犬上さんは笑って答えた。
「しらねー。でも、そのイヌが色々持ってくるんだってさ。金とか米とか、主人が欲しいと思ったものをさ。
やっぱ飢えてるからかね。他人のものでもなんでも、我慢できなくて持ってくるんだって」
「でも、それって自分で食べるわけじゃないんだね。主人に褒めてもらうつもりなのかな」
「偉いことしたから褒めて御飯ください、わんわんって? そんな可愛いものじゃなさそうだけど」
笑顔を苦笑に変えて、犬上さんは話を続けた。

「でさ、あたしの家には、それが憑いてるらしい。だからさ、あたしも色々我慢きかないんだ。
ムカついた奴がいたら殴っちゃうし、つまらんと思ったら学校から飛び出してる」
そんなことはないだろう、とボクは言った。
いや、犬上さんが色々我慢できないのは、困ったことに事実だけれども。
でも彼女のその性格は、そんな忌々しい呪術で縛られた飼いイヌのそれではないと、
山を駆け谷を跳び野を行くオオカミの奔放さなのだと、ボクはそう思ったから。
・・・いやいや、もちろんそんな恥ずかしいことをはっきりとは言わなかったけど!
「犬上さんは、そんなんじゃないと思うよ」
としか言えなかったけど!
だから言葉が足りなくて、犬上さんにしっかり伝えられなくて。
彼女は苦笑をさらに自嘲に変えて言った。
「そんなんだよ、あたしは」
ボクを見るその瞳は、それでもいつものようにキラキラと輝いていた。
「そんな我慢できない、犬畜生みたいなあたしだから」
薄い唇を赤い舌が舐めた。鋭い犬歯がちらりと見えた。
「だからあたしは」



「あんたが欲しい」



そんなこんなで、ボクらはまだ一緒にしゃべったり、出歩いたりという関係を続けている。
・・・押し倒されたり、食べられたりはしてないよ、とは言っておく。
逆に押し倒したり、食べちゃったりもしてないし。
食べたくても食べられない、欲しいのに手に入らない、だから他人のものを奪おうとするんだ、犬神は。
じゃあ教えてあげればいい。
キミはもう満足していいんだと。

「ボクはとっくにキミのものだと思ってたけど」

・・・とはいえ、犬上さんの奔放な振る舞いが完全に納まったわけじゃない。
だから言ったじゃないか、彼女は犬神なんかじゃなくて、大神なんだと。
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無題
わかった。認めますん。
戯言氏 2011/01/01(Sat) 編集
Re:無題
はい、お約束
 【2011/01/01】
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双葉稀鏡
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いつもは別のハンドルを使っている。
某MMOの属性武器の通称と同じなのは嫌なので、こっちを名乗る。
某大学RPG研究会OB。
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